It is'nt 第1章 040節

 帰宅して最初にするべきことは、自分の部屋に電話器を置くことだった。本屋でその手の本を読み漁り、電話機を並列させることができると知る。つまり1本の電話線に2台の電話機をつなぐことができるのだ。すぐに電話機と電話線を購入するため(今でいう)リサイクルショップ巡りをし、その日のうちに自室に電話を引いた。

 ※電話がかかってくると電話が2台同時に鳴る仕様

 翌日になると異なる人たちから5本ほどの電話がかかってきて、それぞれ「〇〇を手伝ってほしい」と言う。どうやら僕は「誰でも使うことができる、丈夫そうな男」という振れ込みが流れたらしい。交渉係、配線係、道路封鎖係、などなど様々な(どれも誰でもできる)役職を拝命することとなった。どちらかと言うと人から怖がられる風貌であったため、こんなに一度に頼りにされる(と思っていた)と、なんだがとても嬉しくなってしまい「なんだか良くわからないけど、燃えてきた頑張るぞ」という気持ちになったことを覚えている。